財務省は、平成29事務年度(平成29年7月〜平成30年6月)において全国の税関が行った輸入品に対する関税および内国消費税の脱税事件に係る犯則調査の結果を公表した。
脱税額
それによると、平成29事務年度に犯則調査に着手した件数は1,456件(前年度比約1.4倍)であり、処分を行った件数は通告808件、告発33件の計841件(同1.5倍)と、いずれも過去最高を記録。処分した事件に係る脱税額は、関税1憶1,180万円(同1.9倍)、内国消費税16億1,270万円(同1.8倍)となり、総額で約17億2,450万円(同1.8倍)となった。
消費税との関連
これは、消費税率を5%から8%へ引き上げ以降、急増している金地金の密輸が要因であり、処分した事件のうち、金地金の密輸事件が720件(同1.5倍)と全体の約86%を占めている。その脱税額は総額で約15億円(同1.7倍)にのぼり、処分件数・脱税額ともに過去最高となった。
金地金の密輸は、消費税が課税されない香港などで購入した金地金を、本来であれば輸入時に税関で納付する必要がある消費税を納付しないで国内に持ち込み、金買取業者に消費税込みの価格で売却することで、消費税額相当分の利益を不正に得る目的で行われる。多くの場合で組織的に行われ、手口も巧妙化しており、税関が摘発できている金地金の密輸は氷山の一角であると考えられることから、財務省では昨年11月に「ストップ金密輸」緊急対策を策定し、検査の強化による水際対策や、経済的不利益を与えるとともに抑止効果を高めるための罰則強化など、総合的な対策を実施している。
これに伴い、金を密輸した者に係る罰則については、平成30年度税制改正において、輸入に係る消費税の脱罪の罰金上限額が「1,000万円または脱税額の10倍が1,000万円超の場合は脱税額の10倍」に引き上げられた。また、併せて関税法上の無許可輸出入罪の罰金上限額も「1,000万円または貨物の価格の5倍が1,000万円超の場合は貨物の価格の5倍」に引き上げられ、平成30年4月10日から適用されている。
来年10月に予定されている消費税率10%への引き上げによって、さらなる密輸の増加が懸念されており、より一層の取締り強化が必要になりそうだ。