民法のうち相続法の分野について、約40年ぶりの大幅な見直しとなる「民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」および「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が成立し、平成30年7月13日に公布された。
改正民法等では、配偶者の居住権を保護するための配偶者居住権の創設をはじめ、遺産分割前における預貯金債権の仮払い制度の創設、相続人以外の親族が被相続人の療養看護等を行った場合に金銭請求できる制度の創設など、多岐にわたる改正項目が盛り込まれており、遺言制度に関しても自筆証書遺言の方式緩和や、法務局における保管制度の創設などの見直しが行われる。
自筆証書遺言を作成する場合は現行、全文を自書する必要があるため、遺言書に添付する財産目録も全文自書しなければならないが、方式を緩和して財産目録については自書でなくてもよいものとされる。これにより、目録をパソコンなどで作成したり、通帳のコピーや不動産の登記事項証明書などを目録として添付することができるようになる。ただし、偽造防止のため、財産目録の各頁に署名押印が必要となる。
また、作成した自筆証書遺言は現状、自宅で保管するケースが多く、紛失や亡失、相続人による遺言書の廃棄、隠匿、改ざんのおそれがあるが、法務局(遺言書保管所)において自筆証書遺言に係る遺言書を保管できるようになる。
遺言書の保管は、遺言者の住所地若しくは本籍地、または遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所に対して申請でき、遺言者本人が申請を行う。保管の申請をした遺言書は、遺言書保管官が原本の保管とともに、遺言書の画像情報等を管理し、遺言者の生存中は、遺言者に限り保管した遺言書の閲覧請求や、保管申請の撤回ができる。
遺言者の相続人、受遺者等は、遺言者の死亡後、遺言書の写し(画像情報等を用いた「遺言書情報証明書」)の交付請求及び遺言書原本の閲覧請求が可能となり、この際、相続人の一人が遺言書の写しの交付・閲覧をした場合は、遺言書保管官から他の相続人、受遺者及び遺言執行者に対して、遺言書が保管されている旨が通知される。
なお、法務局に保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認の手続きが不要となる。
上記のうち、自筆証書遺言の方式緩和は平成31年1月13日に施行、法務局における遺言書の保管制度は公布の日(平成30年7月13日)から2年以内に施行される。また、この他の改正民法(相続法)は原則、公布の日から1年以内に施行となるが、配偶者の居住の権利については公布の日から2年以内である。
民法等のうち(相続法)改正による自筆証書遺言の見直し
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