働き方や人事評価制度について改革の必要性が叫ばれて久しいのですが、これまでは一向に進みませんでした。ところが、コロナ禍によりテレワーク(在宅勤務)が広まり、雇用体系にも変化が表れ始めています。
変化の一例を挙げると、ジョブ型雇用の導入があります。ジョブ型雇用とは成果を重視する雇用制度で、働き手は、まず自身の業務内容を職務定義書に定めます。賃金は職務の達成度合いを重視して支払われるというものです。日本企業の多くは、働き手に対して労働時間をもとに管理し、賃金を支払う形をとってきました。ただ、テレワークが広まり労働の状況を時間で管理するのが難しくなりました。そこで、時間以外の基準で管理することが必要になり、ジョブ型雇用を導入する企業が増えたのです。仕事の達成度で評価すれば、時間で管理しなくても評価できるようになります。
働き手にとっても、働き方の自由度が増すというメリットがあります。子育てや家事の隙間時間を活用すれば、より多くの仕事ができます。また、親の介護と仕事の両立も可能になります。
変化は管理の基準だけでなく、採用にも現れました。社員の採用で、出社を前提としない雇用契約を結ぶ企業も生まれています。また、「国内ならどこに住んでいてもいい」とルールを設定した会社もあります。
近年、人材不足に悩む企業は少なくありません。テレワークを前提に採用できるようになると、オフィスに通えない遠隔地に住む人材も採用でき、多様な人材を獲得できるチャンスが広がります。
テレワークの導入には、これまで社会が抱えていた課題の解決に繋がるといったメリットもあります。
コロナ禍によりテレワーク(在宅勤務)が広まりつつある中、ジョブ型雇用を導入する企業が増えています。ジョブ型雇用では仕事の達成度合いが評価の基準になります。
先日、日立製作所は約2万3000人を対象に、ジョブ型雇用の導入を表明しました。ほかにも、NTTグループやカルビー、資生堂など、多くの企業で導入を表明しています。ようやく、日本の労務管理のあり方にも変化の兆しが見えるようになりました。
とはいえ、成果主義の導入は、1990年初のバブル崩壊や2000年初頭のITバブル崩壊など、経済危機が訪れるたびに話題となりました。それでも、日本の社会には馴染めず定着しませんでした。
理由は多岐に渡りますが、評価基準に対して社員の不満が拭えないことが一つとしてあります。労働に対して職務の達成度が評価の基準となれば、短期間で成果を挙げた人が高く評価されるようになります。会社にとって大切な仕事なのに、地味で成果が見えにくい仕事に就くと不当に低く評価されてしまうことも不満の要因になりました。
また、中には、お金を多くもらうことが必ずしもモチベーションに繋がらないという人もいます。お金よりもやりがいのある仕事に就き、徐々に重要なポジションに就くことがモチベーションに繋がるという人も少なくありません。このような層に対しては、仕事の達成度で賃金を支払うだけでは十分とは言えません。達成度が高ければ、次はさらにやりがいのある仕事や重要なポジションに就けるといったインセンティブが必要になります。
今回のジョブ型雇用は日本社会に根付くのか。あるいは、かつての成果主義のように消滅していくのか注目したいところです。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)