自社の中核を磨く

 最近、同業者間での業務提携の発表が相次いでいます。先日は三菱UFJ銀行と三井住友銀行がATMで相互提携を行うと発表しました。金融だけでなく、食品業界をはじめとして物流分野を中心に、同業者間の提携が拡大しています。昨日までライバルとして容赦のない競争をしていた企業が、これまでの因縁を乗り越え、明日からはパートナーとして一転提携する時代に入りました。

 マーケットが拡大しているときには、人を増やし、技術開発や販促費にカネを注ぎこみ、拡大するマーケットから自社の取り分(売上)をできるだけ多く獲得することが当然の企業戦略でした。徹底的に前向きに競争することにより、お互いが強くなれる時代だといえます。

 しかし、そうした良き時代は過ぎ去り、我が国は人口減少時代に突入しました。それに加え、政府・日銀の懸命な努力にもかかわらず、将来不安からデフレマインドは止まらず、消費者の財布のひもはゆるみません。消費者が少なくなることに加え、その消費者はネットを駆使しながら、できるだけ安く買おうとします。国内マーケットの縮小は必至であり、国内を主戦場とする企業は何らかの対策が迫られます。

 マーケットの縮小が不可避で、売上は現状維持が精一杯だとすれば、利益確保のためには、経費削減しかありません。当然、単体企業でできることから始めますが、それだけでは限界があり、次に企業の枠を超えた経費削減のステージに入っていきます。複数企業の共同による経費削減の究極の形は合併等の企業統合になりますが、合併はすべてが一社に集約される会社組織の全面的変革であり、そこまで持って行くのは容易ではないし、会社の数を減らすことが必ずしも正解となるわけではありません。そこで、現在の企業形態を維持したまま、特定部門に絞った複数企業の共同化が有力な戦略として浮上するわけです。

 同業種におけるライバル企業は似たような商品を作り、同じようなルートで商品を販売しているのですから、重なり合う部分が多く、その重複する分を共同でやれば経費削減効果が大きいのは自明です。

 しかし、共通する部分は何でも一緒にやればいいというわけではありません。共同していい分野と、してはいけない分野があります。それを決めるのは自社の中核業務と周辺業務の見極めです。自社の中核、つまり自社のアピールポイントをどこにおくかを明確にしておかなければなりません。食品業界で自社のアピールポイントが味であり、味では他社に負けないと考えるなら、物流で提携することは合理的です。しかし、自社の強みは迅速な配達であるとするなら、物流で妥協することはできません。アマゾンなどはこうした側面もあり、物流にも相応なこだわりがあるように見えます。

 とにかく、中核部門では譲らず、それ以外の周辺業務は他社との提携の対象とし、経費の圧縮を図るべき部門となります。しかし、自社のコアとなる価値が不確定なまま提携すると、大手や商品力の強い企業にのみ込まれてしまう危険性があります。

 需要の減退に直面する業界では、経営統合の前に、同業他社との提携は有力な選択肢だと思われます。それは何も全国ブランドの大企業だけの話ではありません。地域で観光や地場産業などで同種企業が併存し、全体の業績が低迷している地域は珍しくありません。需要が伸びている時には、ライバルとして切磋琢磨してきた企業同士でも、需要が減退すれば、提携も考えていかなければなりません。  そうしたときのためにも、中核業務と周辺業務を峻別し、他社に負けない中核的企業価値を育成しておく必要があります。

(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)