スマートシティーの実証実験が進んでいます。スマートシティーとは、ITや環境技術などの先端技術を駆使した次世代の街を指します。技術で都市機能や暮らしを向上させることが目的です。サービスは多岐に渡りますが、交通分野ならば、車の走行データなどのビッグデータを活用し、渋滞の緩和や物流の効率化といったことが挙げられます。
国内には「スマートシティー構想」を掲げ関連事業に取り組む地域や本格事業化を進める企業が多数あります。行政のデジタル化の機運が高まる中、街づくりにもその波が押し寄せているともいえます。
渋谷エリアではアプリサービス「shibuya good pass」の実証実験が始まりました。これは、渋谷区の在住者や渋谷エリアで働く人を対象としたアプリです。ユーザーは月額基本料を支払うと、連携する都市サービスを利用できるというものです。
当初用意されるサービスは、約10ジャンルあります。一例を挙げると、小型車やマイクロバスを使った月額乗り放題のサービスがあります。利用者はスマートフォンから車を呼び出します。すると、AIが最適ルートを導き出し、近くを走る車両を配車します。家から2キロメートル先の店で食事がしたい。そんな時、アプリを利用すれば軽自動車などが家の近くまで迎えにきてくれます。月額乗り放題なので、タクシーのようにメーターを気にすることもありません。このほかにも、月額オフィス会員サービスや再生可能エネルギーの提供、都市農園など、多岐に渡るサービスが用意されています。こうしたサービスをまず渋谷で実装し、その後は国内の複数の都市に展開することでさらに収益を上げていくことが可能になります。 福島県会津若松市を例に挙げると、同市では様々な実証実験が進められています。観光名所の鶴ヶ城では、新型コロナウイルス感染症対策のため密集回避システムが稼働しています。これは、AIを搭載した3Dカメラが人の動きを感知。人との間隔が1.5メートル以内になると赤色で表示されます。結果、人との距離を保ち、密を避けることができます。
こうしたビジネスチャンスは国内にとどまらず、輸出での利益にも期待が寄せられています。背景には、政府がインフラ輸出に関する新たな戦略を明らかにしたことがあります。従来、インフラの輸出といえば、道路や鉄道といった「重厚長大」が中心でした。が、今後は、ESG(環境・社会・企業統治)分野に重点が置かれるようになります。スマートシティーは環境技術を駆使するため、輸出の強化が掲げられています。
現在、ベトナムの首都ハノイやミャンマーの都市マンダレー、インドなど、東南アジアでは多くの都市がスマートシティー建設を決定しています。1都市のインフラ開発事業に参加するだけでも数百億円規模のビジネスになるともいわれています。これらビジネスチャンスを得るため、政府は日本企業が東南アジア諸国連合(ASEAN)で手がけるスマートシティー事業を後押しする姿勢でいます。
競合する中国や韓国にどこまで対抗できるか。スマートシティー事業が日本に大きな利益をもたらすことに期待したいところです。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
スマートシティーで生活はどのように変わるか
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